本当に誰もが「実名」にする時代が来ると思いますか?
「トレンドは実名だ!学生は実名を公開することに抵抗ないし、これからはみんな実名になる」などとよく聞きますが、本当にこれからのSNSは実名が当たり前になっていくと思いますか?周りが実名派ばかりの人は、実名が増えて普通になっていると感じるのかもしれません。でもそれは一部の恵まれた状況の人だけです。
私は社会自体がもっと根本的なところで変わらない限り、実名を公開したくないという要望は絶対に無くならないと思います。現実社会が多様性を認めるおおらかさがあり、誰にとっても居心地がよければ、話は別ですが。そのような社会になる可能性はどのくらいあるのでしょう?
実名を公開したくない理由は「悪意」「不安」「ブランディング」
「実名も公開できない卑怯なやつ」などと言われがちですが、誰もが「卑怯」な理由から実名を公開しないのでしょうか? 実名を公開しない理由は大きく下記の3つに分けられます。- 悪意…人に言えない悪だくみをしていたり、他人を攻撃するなどの目的
- 不安…身に危険がおよぶ恐怖や、シガラミのある相手に見られることによってイヤな思いをする心配など
- ブランディング…実名でないアーティスト、ゆるキャラ、アバターのブランディングなど、自分の枠に縛られないで自由に表現したい場合
対応が必要なのは「悪意」のあるユーザ
「悪意」のあるユーザは他人に被害を及ぼします。本来規制が必要なのはここでしょう。現実社会で暴力は犯罪となりますが、ネットでの言葉の暴力も同様に取り締まられる必要があると思います。「心」も「体」と同じく傷つけられます。身体的な暴力以上のダメージを食らうときだってあります。悪意があるユーザは目立つので、実名を公開しないユーザの大半だとイメージしている人もいるかもしれませんが、「悪意」のあるユーザは実際は少数だと思います。
ネットでの実名公開に「不安」を持つのはしょうがない
「実名でネットするのは恐い」というイメージを持ってしまう人は多いのです。その人の生まれ育った環境、遺伝、運、置かれた状況など、さまざまな要因がからみ合って、そうういう考えに至ったのです。本人の責任が全く無いとは言いませんが、自分の力ではどうにも出来なかったことだってあるのです。「実名公開は正しい考え方。できないやつは切り捨てればいい」?
リテラシーの高いユーザの中では実名の快適さに、「もうこれから先は実名しかありえないっしょ」となるのも理解できます。できる人にありがちな「これが正しい考え方。できないやつは古い考え方。ついてこれないのは努力不足。だから切り捨てることは間違ってない」の論理展開。Google内部ではこういう結論になってしまったのでしょうか。
人は自分にできていることは簡単にやれると思いがちで、他人の事情には考えが及ばないものです。
プラットフォームとして大事なことは多様性を許容すること
Google先生はプラットフォーム中のプラットフォームといえる存在だと思います。少なくともこれまでは雑多なものを飲み込む度量というか、そういうものがありました。でもソーシャルの分野で苦戦を強いられていたからか、今までの余裕が感じられません。実名強要という窮屈な方針転換に違和感を覚えます。プラットフォームとして大事なことは、多様性を許容できることです。どうか以前のような包容力を取り戻してくれればなぁと思います。不満を持つ人が多ければ多いほど、アンチテーゼなサービスが普及する
規制が強くなり、それに不満を持つ人が増えると、かならずアンチテーゼなサービスが伸びて、多くの人達の受け皿になります。たくさんの人が不満に思うことを、強者側の論理でねじふせたとしてもいいことはありませんよ。
少なくともこのまま強行すれば、今後に多大な影響を及ぼすことは間違いありません。
実名ルールはGoogle+に蓄積される有益な情報を確実に減らす
実名を公開したくない人には、有益な情報の発信する人も多いと思います。特に日本にはそういう人が多いと思います。例えば下記のような人です。- 大企業で働いているが、シガラミから実名では言えないことが多い。だからネットではニックネームで情報発信をしたい。
- 趣味に関してはかなり詳しい。情報発信したいが職場や学校の人には知られたくはないのでニックネームで活動したい。
- ネット上でアーティストとして活動したいけど、実名は出さないでブランディングしたい。
ソーシャルグラフをリアルとは別に作りたい!ってダメなの?
インターネットは新次元の広大な未開拓地です。アイデア次第でいろいろな可能性が広がっています。そこは現実の写し鏡である必要はありません。むしろ現実社会のシガラミをネットまで引き継いで、身動きがとりづらくなるのはイヤだと考える人も多いのです。実名を出さないのは、実生活の影響を受けないで、のびのびと楽しみたい気持ちもあるでしょう。ネット上ぐらい、新しいソーシャルグラフを作れる可能性ぐらい残してくれてもいいんじゃないですか、Google先生。片方向フォローシステムはアバターを許可した方が絶対におもしろい
Google+はtwitterのように有名人への片方向関係とリアルの双方向関係を、同じ機能で同列に扱おうという設計です。Facebookはリアルの双方向関係を前提としたシステムです(Facebookページは全く別機能)。だから実名主義がフィットするのです。
twitterやGoogle+は片方向関係がベースですから、リアル関係よりネット上のみの関係が必然的に多くなるでしょう。どうせバーチャルのつながりの方が多いのであれば、twitterのように自由にアバターを許可した方が絶対に面白いし、多くの人に門戸を開くことにはなると思います。
botとか各地のゆるキャラとかは、やっぱり無理なのでしょうか?
ちなみに「ガチャピン」とか「ちきりん」とかって許されるんですか?「ちきりん」は通名だからOKなんですかね??
Google先生はtwitterを完全に飲み込むつもりのようですが、今のままではtwitterの受け皿になることはできないと思います。
Google+のシステムであれば様々な社会が共存できるポテンシャルがある
実名以外を相手にしたくない人は最初から自分の視界に入れないようにするだけでいいんじゃないですか。事実twitterのタイムラインは自分の信用できる人だけで埋めることができます。twitterだと直接メンションでメッセージを送りつけてきたり、Google+だと勝手にうざい返信をされることもあるでしょうが、それは実名ルールとは別問題です。せっかく、Facebookの現実社会のツールとしての便利さと、twitterの自由な面白さを共存できるポテンシャルがあるのに。。。どうか設計のすばらしさを生かしてください!!改良次第では両方を吸収し、SNSのデファクトスタンダードになれると思うのですが。。。
そもそもGoogle+の実名公開の目的は何?
私には下記の3つしか思いつきません。- 秩序が保たれる(誹謗中傷など減る可能性がある)。
- ユーザ同士をつながりやすくする
- 実名(アイデンティティ?)をGoogleが把握することで、利益が得られるビジネスモデルがある
実名を公開することにより「 1. 秩序が保たれる」は本当?
実名ルールと誹謗中傷・脅迫などは直接関係しているわけではありません。今までの実名・匿名議論でさんざん言われてきたことだと思います。実際には確実に実名にすることは難しいのですから、秩序が保たれるということはありません。実名っぽい名前をつければ、いくらでもアカウント登録できちゃいますよね?もしそうならあまりにも中途半端です。身分証明を求めるにしても登録時必須にしないと意味が無いと思います。「2. ユーザ同士をつながりやすくする」はユーザの要望?
Facebookのように「あなたの友達かも?」と紹介するときに実名が必要なのかもしれませんが、逆に勝手に知らせて欲しくないユーザのことは考えてますか? 友達に見つけてほしい人は最初から実名にするでしょうし、自分から連絡するでしょう。勝手に見つけられたくない人は非公開にするでしょう。メールを送っただけの相手にいちいち存在を知らせて欲しくない場合だって山ほどあると思います。「3. 実名をGoogleが把握することで、利益が得られるビジネスモデルがある」
Google先生としてはシステム内で実名を保持し、アイデンティティ(ユーザの同一性)が把握できれば無理に公開しなくても要望は満たされませんか? そもそもニックネームでもアイデンティティはあると思います。- アイデンティティあり(実名 or ニックネーム)
- アイデンティティなし(匿名)
どちらにしても実名っぽい名前でいくらでもアカウントが作れるのなら大差はありません。
それとも何か別の「実名」を利用した恐ろしいビジネスモデルを考えられているのですか?
システム開発で新しい仕組みを取り入れる時によく使う解決策
多くの人は基本的な考え方はなかなか変わらないものです。今の日本を考えればよくわかると思います。システム開発で実感したことですが、多くの場合、利用者の思考になじまないことを強行したシステムは使われません。正しいアプローチは「新しいこと」をベースにしたシステムを作り、その上で多くの人が許容できる範囲のオプションを用意することです。
実名問題の場合だと落とし所は、
登録は実名を必須にし、公開/非公開は選択でき、知人・友人・取引相手、それぞれの「サークル」ごとに実名の公開オプションをつけるだと思います。現時点での最良の解決策はこれ以外ないと思います。
もちろんこんな簡単なことをあえてやっていないのは、それなりの理由があるのでしょう。
たとえば実名が公開されていれば、他のユーザの通報で偽名が判明しやすく自浄作用が働くということがあるのかもしれません。でもそれの代替案はあります。
実名の公開範囲の選択機能は、誰もが自然に受け入れられる最良の解
amazonマーケットプレイスも出品者とやりとりする場合は実名ですが、評価など一般に公開される名前はニックネームです。ほとんどのネットショップは評価などを実名公開にするケースは無いのではないでしょうか? 実名公開を必須にしたら、評価する人の数が激減すると思います。それと同じように、一般に公開する名前はニックネーム可能で、取引相手や、信用のおける相手だけが、実名を把握しているというやり方が一番現実的で、誰もが自然に受け入れることができる、現時点での最良の解です。例えば就職活動であっても、SNSの活動を見せる必要がある場合、採用担当者を実名公開のサークルに追加するといった使い方も考えられます。
ユーザにとってもGoogle先生にとってもWin-Winの提案!
どうしてもGoogle先生は実名にこだわり続けますか? それとも、いまさら方針変更ができませんか? それなら、いままでどおりフリーのアカウントは原則実名公開とし、どうしてもニックネームで活動したいユーザには、住所確認の有料オプションを用意することはいかがでしょうか。支払いはGoogle Checkoutでも利用すればいいと思います。Google先生であれば、住所確認の自動化も簡単でしょう。確認の手順は下記のような感じです。
- Googleアカウントに対して自宅住所を入力する
- 自宅に「認証コード」が書かれた郵便が届く
- 「認証コード」をGoogleアカウントに入力する
「認証済シール」がすでにあるようですが、住所確認だけの場合は「簡易認証済シール」(例えばチェックだけのデザイン)をプロフィールに表示すれば、実名公開の人でも信用度が上あがるので申し込むでしょう。それにGoogle Checkoutも普及します。Google+のこれからの人数の増加を考えると、かなりの売上になること間違いありません。
手頃な価格であれば、まさにユーザにとってもGoogle先生にとってもWin-Winです!
実名非公開であっても問題行動があった場合は、「実名」を公開する可能性があることを明示しておけば抑止力にもなると思います。
おわりに
Facebookは実名でいいと思います。現実社会の便利ツールですから。Google+はFacebookと同じことをしていたら芸がありません。
「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」これは先生の理念の一番目に書かれているものです。実名公開ルールという、安易な解決策じゃなく、多くの実名非公開派ユーザの要望も、実名公開ユーザの要望も、どちらも取り込める、おおらかなプラットフォームを目指してくれることを切に願います。そして初心を忘れず、末永くネットで君臨してください。
追記
Googleの元CEOエリック・シュミット氏が『実名を使いたくなければGoogle+を使うべきではない』と公言本気なんですね。。。Google+はちょっと様子見にしようと思います。割りきって仕事だけ実名にするか。。。
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